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セキュアなAPI設計と認証方法 ~信頼されるインタフェースをつくるための原則と実装~

API開発者やセキュリティ担当者向けの実践的なガイド。最小公開原則からOAuth 2.0まで、セキュアなAPI設計の6つの原則と4つの認証方式を解説。実装例とチェックリスト付き。

2025/6/13
15分
S.O.

セキュアなAPI設計と認証方法

~信頼されるインタフェースをつくるための原則と実装~

はじめに

Webサービス、モバイルアプリ、IoTなど、多くのシステムがAPI(Application Programming Interface)を介して通信する時代になりました。機能拡張や外部連携の中核となるAPIですが、それは同時に「攻撃者に最も狙われやすい接点」でもあります。

本記事では、セキュアなAPI設計における重要な原則と、効果的な認証方法を、実践的な視点で解説します。


APIセキュリティの原則

1. 最小公開(Principle of Least Exposure)

対策項目説明実装のポイント
✅ 必要なエンドポイントだけを公開不要なAPIエンドポイントは非公開に開発・テスト用APIは本番環境から完全に分離し、必要な機能のみを外部に公開
✅ デバッグ用や内部用APIは非公開ネットワークに隔離内部システム専用の通信経路を確保VPCやプライベートネットワークを活用し、管理用APIへの外部アクセスを遮断
✅ GraphQLではスキーマ制限で情報漏洩を防ぐクエリの深度制限と複雑性制御最大クエリ深度の設定、フィールド単位でのアクセス制御、イントロスペクションの無効化

2. ステートレス設計(Stateless Architecture)

対策項目説明実装のポイント
✅ 各リクエストに認証情報を明示的に含めるセッション状態に依存しない設計JWTトークンやAPIキーをAuthorizationヘッダーに含め、サーバー側でのセッション管理を不要に
✅ REST APIではHTTPヘッダーが主流標準的な認証ヘッダーの使用Authorization: Bearer <token>形式での認証情報送信
✅ GraphQLでもAuthorizationヘッダーを使用一貫した認証方式の採用REST APIと同様の認証メカニズムをGraphQLでも適用

3. 通信の暗号化(Encryption in Transit)

対策項目説明実装のポイント
✅ すべての通信はHTTPS(TLS 1.2以上)を使用中間者攻撃の防止TLS 1.3の推奨、古いプロトコル(TLS 1.0/1.1)の無効化
✅ 自己署名証明書やHTTPでのAPI公開は禁止信頼できる証明書の使用認証局(CA)発行の証明書使用、Let's Encryptなどの無料証明書も活用可能
✅ HSTS(HTTP Strict Transport Security)の有効化HTTPS接続の強制Strict-Transport-SecurityヘッダーによるHTTPS接続の強制

4. セキュアなエラーハンドリング(Secure Error Handling)

対策項目説明実装のポイント
✅ 詳細なエラーメッセージを返さない情報漏洩の防止認証失敗時は「ユーザー名が存在しない」ではなく、常に「401 Unauthorized」で統一
✅ 適切なHTTPステータスコードの使用エラーの種類を正確に表現401(認証エラー)、403(認可エラー)、429(レート制限)など適切なコード設定
✅ スタックトレースの非表示内部構造の隠蔽本番環境では詳細なエラー情報をログに記録し、ユーザーには一般的なメッセージのみ表示

追加の重要なセキュリティ対策

5. レート制限とスロットリング(Rate Limiting)

対策項目説明実装のポイント
✅ IPベースのレート制限DoS攻撃の防止特定IPからの過剰なリクエストを制限(例:1分間に100リクエスト)
✅ ユーザー/APIキーベースの制限公平なリソース利用ユーザーごと、APIキーごとの利用制限設定
✅ 429エラーとRetry-Afterヘッダー適切なレート制限通知制限超過時に再試行可能時間を通知

6. 入力検証とデータ保護(Input Validation)

対策項目説明実装のポイント
✅ すべての入力パラメータの検証インジェクション攻撃の防止型、長さ、形式の厳密なチェック、ホワイトリスト方式の採用
✅ JSONスキーマバリデーション構造化データの検証期待されるデータ構造に基づく自動検証
✅ SQLインジェクション対策データベース保護プリペアドステートメントやORMの使用

認証方式の選択肢

1. APIキー認証(API Key)

クライアントごとに発行した固有キーをHTTPヘッダーやURLパラメータで送信

簡単で導入しやすいが、個人単位の識別や権限制御には向かない

GET /api/v1/data HTTP/1.1
Host: api.example.com
Authorization: ApiKey abc123xyz
# または
X-API-Key: abc123xyz

特徴と適用場面

  • 簡単で導入しやすいが、個人単位の識別や権限制御には向かない
  • アプリケーション識別に適している(個人認証ではない)
  • 公開APIや開発者向けAPIでよく使用される

重要な注意点

注意項目説明対策
✅ HTTPS必須HTTPSで送信しないと漏洩リスクありすべてのAPI通信でTLS 1.2以上を強制
✅ キー管理キーの再発行・失効管理が必要定期的なローテーション、即座の無効化機能
✅ アクセス制限IPアドレスやReferer制限の併用送信元制限、レート制限の実装
✅ ログ監視異常なアクセスパターンの検出APIキー使用状況の監視とアラート

2. Basic認証

基本的な仕組み

Authorization: Basic base64(username:password)

特徴と問題点

  • シンプルだが、パスワードを直接送るため非推奨
  • Base64エンコードは暗号化ではないため、容易に復号可能
  • 管理用の簡易ツールなど、限定用途にのみ使用すべき

セキュリティリスク

  • 盗聴リスク:Base64は単純な変換で容易に復号される
  • リプレイ攻撃:同じ認証情報が毎回送信される
  • ログアウト困難:ブラウザが認証情報を保持し続ける

使用する場合の最低限の対策

  • HTTPS必須(HTTP通信では絶対に使用しない)
  • 内部ネットワーク限定での使用
  • 一時的な開発・テスト用途に限定

3. トークンベース認証(Bearer Token/JWT)

■ Bearer Token(アクセストークン)

基本的な仕組み

認証後に発行されたアクセストークンをAuthorizationヘッダーに付加して利用

Authorization: Bearer eyJhbGciOiJIUzI1NiIsInR5cCI6IkpXVCJ9...

特徴

  • サーバー側で有効性を検証(DBやRedisなど)
  • セッション管理が容易(トークン無効化が可能)
  • スケーラブルな設計に適している

■ JWT(JSON Web Token)

基本的な仕組み

トークンにユーザー情報や有効期限を含む

{
  "alg": "HS256",
  "typ": "JWT"
}.
{
  "sub": "12345",
  "role": "admin",
  "exp": 1712345678,
  "iat": 1712342078
}

特徴

  • サーバーレス/ステートレス設計に適する
  • 改ざん防止のため署名(HMACやRSA)が必須
  • 自己完結型(サーバー側での状態管理不要)

重要な注意点

注意項目説明対策
✅ 機密データの除外機密データ(パスワードやカード番号)はJWTに含めない最小限の識別情報のみを含める
✅ ログアウト処理ログアウト処理が難しいブラックリストまたは短命+リフレッシュトークンで対応
✅ トークン有効期限適切な有効期限の設定アクセストークン:短期間(15-30分)、リフレッシュトークン:長期間
✅ 署名検証署名の確実な検証強力な秘密鍵の使用、定期的なキーローテーション

4. OAuth 2.0/OpenID Connect

OAuth 2.0の特徴

  • 認可フレームワーク(「何ができるか」を制御)
  • 外部認証(Google, Apple, LINEなど)との連携が可能
  • 認可コードフロー(Authorization Code Flow)+PKCEが推奨

OpenID Connectの特徴

  • OAuth 2.0の拡張として認証機能を追加
  • OpenID Connectを用いることで「誰か」も認証できる(IDトークン付与)
  • IDトークンとアクセストークンの両方を発行

認可(Authorization)の実装例

  • ロールベース制御(RBAC):管理者、編集者、閲覧者など
  • 属性ベース制御(ABAC):国・IP・端末などに応じて許可
  • スコープベース制御(OAuth):scope=read:users write:postsなどの権限分割

レート制限と監視の導入

■ レート制限(Rate Limiting)

  • 例:IP単位で1分あたり60回まで
  • 実装例:API Gateway、NGINX、Cloudflareなどで設定可能
  • HTTP 429 Too Many Requestsで制御

■ モニタリング項目

項目目的
アクセスログ不正IPやスパイクの検出
失敗リクエスト数認証試行や総当たりの把握
トークン使用履歴なりすましの兆候把握
成功率やレスポンスタイムパフォーマンス監視

その他のセキュリティ対策

  • CORS制御:信頼できるドメインからのみリクエストを許可
  • CSRF対策:セッションベースAPIではCSRFトークン導入
  • ログの保護:個人情報・トークンを含まないようマスキング
  • 入力サニタイズ:XSS/SQLi防止はバックエンドでも必須
  • ドキュメント制限:SwaggerやGraphQL Playgroundの公開を環境限定に

まとめ:セキュアAPI設計のチェックリスト

項目実装済み?
すべてHTTPSで通信しているか✅/❌
認証トークンの署名・有効期限を設けているか✅/❌
エラーメッセージで情報漏洩していないか✅/❌
レート制限で不正アクセスを抑制しているか✅/❌
RBACやスコープで細かい権限管理がされているか✅/❌
外部との連携(OAuth等)が安全に設計されているか✅/❌

セキュアなAPIは、システムの"神経"であり、ユーザーとサービスの信頼をつなぐ"血管"でもあります。外部からの攻撃と、内部設計の甘さの両方に備えることが、現代のAPI設計には必須です。


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