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フォームセキュリティと入力サニタイズ処理

Webアプリケーションのフォームセキュリティについて解説。XSSやSQLインジェクションなどの脅威から、サニタイズ処理の実装パターン、セキュリティヘッダーの設定まで、実装者視点で具体的な対策方法を紹介します。

2025/6/13
9分
S.O.

フォームセキュリティと入力サニタイズ処理

〜見えない"穴"を防ぐ堅牢な入力対策の設計とは〜


はじめに

Webアプリケーションにおいて、ユーザーの入力を受け取る「フォーム」は、利便性の入り口であると同時に、セキュリティリスクの入り口でもあります。問い合わせフォーム、ログイン画面、検索窓など、外部入力を通じて発生する脆弱性の多くは、適切な検証やサニタイズが行われていないことに起因します。

とりわけ、XSS(クロスサイトスクリプティング)やSQLインジェクションなどは、入力フォームから発生する典型的な攻撃ベクトルです。本記事では、フォームセキュリティの基本と、効果的なサニタイズ処理について、実装者の視点から整理します。


フォームに潜む主な脅威

1. XSS(クロスサイトスクリプティング)

悪意のあるスクリプトをフォーム経由で入力させ、それを他ユーザーの画面上で実行させる攻撃。

例:

Text

<script>alert('XSS');</script>

を投稿フォームに入力

被害:

  • Cookieや認証情報の盗難
  • 管理者権限の奪取
  • フィッシングページへのリダイレクト

2. SQLインジェクション

入力値をそのままSQL文に組み込み、DB操作を改ざんする攻撃。

例:' OR '1'='1 をログインフォームに入力

→ 本来認証不要でログイン成功

3. コマンドインジェクション・ディレクトリトラバーサル

OSコマンドやファイルパスに不正な文字列を挿入し、システム操作を乗っ取る攻撃。


サニタイズ処理とは何か?

サニタイズ(sanitize)とは、入力された文字列から、アプリケーションの意図しない命令・記号・スクリプト等を無害化する処理を指します。

サニタイズ vs エスケープ vs バリデーション

処理目的例(入力:"<script>")
バリデーション「正しい値か」を確認NG(スクリプトは許可しない)
サニタイズ危険部分を除去・置換&lt;script&gt; などに変換
エスケープ表示時に無害化HTMLエスケープで表示のみ変換

※バリデーション→サニタイズ→エスケープの順に処理を行うのが理想的です。


サニタイズの実装パターン

1. HTMLサニタイズ(XSS対策)

方法1:文字の置換

Text

< → &lt;
> → &gt;
" → &quot;
' → &#x27;

多くのテンプレートエンジン(e.g. Twig, Handlebars, JSX)では、デフォルトでHTMLエスケープが有効になっています。

方法2:HTMLホワイトリスト(HTML Purifier系)

投稿系サービスでは、特定のタグ(例:bタグやaタグ)のみ許可し、それ以外を除去するフィルターを導入。

JavaScriptライブラリ:DOMPurify

PHP:HTMLPurifier

Python:Bleach

JavaScript

DOMPurify.sanitize('<img src=x onerror=alert(1)>');
// 結果: <img>

2. SQLインジェクション対策

プリペアドステートメント(バインド変数)を使用

SQLに文字列結合せず、プレースホルダーで値を渡す。

NG例:

PHP

$sql = "SELECT * FROM users WHERE name = '$name'";

OK例(PDO):

PHP

$stmt = $pdo->prepare("SELECT * FROM users WHERE name = :name");
$stmt->bindParam(':name', $name);

3. ファイルパス/OSコマンドの保護

  • ../;, | などの文字列を検出してブロック
  • ファイルアップロード時は、ファイル名を乱数化し、ユーザーの指定名をそのまま使わない
  • OSコマンドを組み立てる場合は、引数のバリデーションとエスケープを徹底

入力サニタイズのベストプラクティス

項目対策例
文字種の制限名前→全角ひらがなのみ、年齢→数値のみ
文字数・形式の制限正規表現、maxlength属性の併用
HTMLタグの除去strip_tags(), DOMPurifyなど
JavaScriptの除去scriptタグやイベント属性のブロック
出力の文脈ごとにエスケープHTML / JavaScript / URL それぞれに応じた処理
ログ記録の保護ログ出力時にもエスケープ(XSSがログ画面に表示されないように)

セキュリティヘッダーの併用

入力対策と合わせて、ブラウザ側でのセキュリティ対策も有効です。

ヘッダー名効果例
Content-Security-Policy外部スクリプトの実行制限
X-Content-Type-Options: nosniff不正なMIME型の解釈を防止
X-Frame-Options: DENYクリックジャッキング対策

まとめ

フォーム入力は、ユーザー体験の起点であると同時に、脅威の起点にもなり得ます。開発者が"入力値を信じない"という意識を持ち、バリデーション→サニタイズ→エスケープの多層防御を徹底することが、堅牢なアプリケーションを支える鍵です。

処理段階主な目的
バリデーション想定外の入力を拒否
サニタイズ危険要素の除去
エスケープ表示時の安全確保

入力の自由を守りながら、アプリケーションとユーザーの安全も守る──そのバランスを保つための最前線が、入力サニタイズ処理の設計なのです。


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